darling, darling

くだらない自己顕示欲を満足させるために惰性で行っていたSNSに、非常に猥褻な行為をしている最中のボーイズラブのイラストを投稿した。こんなにも晴れ晴れとした気分になったのは、中学2年生の夏休みの、部活動の朝練を終えて帰宅する途中に感じた夏の空気の清冽さに感動して泣いたあの日以来だったことに気づいたあおいは、驚きを隠そうともせずに部屋をうろついた。 するとパソコンから、自分の投稿に誰かがコメントをしたことを知らせる音が鳴り響き、あおいはうきうきと画面を覗き込んだ。果たしてそこには、ゲス野郎生まれ直してこいといったネガティブな言葉が表示されており、コメントした人の名前を見ると、ボーイズラブにおけるカップリングの趣味が一緒であるという理由で、普段から表面的に仲良くしていた「ゆにこーんさん」だった。ゆにこーんさんは性的な表現のすべてを憎んでおり、あおいが以前軽い気持ちで、陰部の名称を織り込んだ独自の挨拶を投稿したら、陰惨な画像を「死ね」というひと言を添えてメールで送って来たことがあった。 あおいはそんなゆにこーんさんをピュアであると感じ好意を抱いたが、その画像が、あおいが大好きで毎朝食べていた惣菜パンをぐちゃぐちゃに踏み荒らしている画像であったことに目眩がするほど腹が立ち、最もたちが悪いとネットのアンダーグラウンドで囁かれているコンピューターウイルスを添付してゆにこーんさんのメールアドレスへ送り返した経緯があった。 あおいは今日のようなブルーデイのために買っておいた、チベットの寺院で焚かれているというお香に火をつけた。貴重なハーブを特殊な割合で調合してあるお香は、あおいの部屋をたちまち、チベットの寺院っぽくした。(これで何回目の輪廻転生をしたのかな。)あおいはいい感じの回廊で足を止め、いにしえの森羅万象にときめきを禁じ得ず生まれて初めての深呼吸をした。視線の先の虚空に出現したすべてを飲み込んでしまう巨大な渦のなかで、煌めきながら消えていく幾千の前世の記憶に思いを馳せた。