Heavenly Blue

ライブで着る衣装のワンピースを、ミシンを持っていないために手縫いすることを安易に計画し現在実行しているひなたは、その計画があまりに楽観的に過ぎ杜撰極まりなく、そもそも自らの精神が実年齢よりも幼稚であることをうすうす思い知りはじめていた。おおよその計算でそれは3時間程度で仕上がる予定だったが、夜9時から手縫いを開始、深夜ラジオを新鮮な気持ちで楽しく聴けていたのがその3時間だった。ひなたの集中力は3時間が限界であったため、その後は手縫いという作業の原始的な動作が、殴り殺されている途中のような精神的苦痛をひなたに与え続けていた。仮にミシンを使っていたならば、時間がかかったとしても機械の不調のせいにすることは容易く、ミシンと意思疎通はできなくともこの事態を共有しているかのように感じることはでき、うまくいけば機械と人間の織り成す愛憎劇から誰が想像し得たであろう感動のラストシーンへと誘われるハートフルヒューマンドラマに逃避することも可能であっただろう。だが、今日の昼から始まるライブのリハーサルまでにこの衣装を手縫いで完成させることができるのは今、この部屋に自分ひとりしかいないのだった。東の空が神秘的な色を帯び、ひなたの人生における精神的自立の萌芽がみとめられた、記念すべき一日のはじまりを告げていた。